物理化学系セミナー
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 第14回物理化学系セミナー
日 時2008年7月14日(月)17:00〜18:30
場 所理学部 E210教室
演 題散乱法とレーザー分光法による化学反応ダイナミクス研究
担 当高口 博志 先生(反応物理化学研究グループ)
内 容化学反応機構がポテンシャルエネルギー曲面上での系の運動として理解されることは,化学の基本概念です。しかし,実際に反応系の動きを実験的に検出するためには,近年になって高度に発展した実験手法を必要としました。「ダイナミクス(動力学)」という用語は,化学の分野においても様々な意味で用いられますが,ここでは最もシンプルに,「反応ポテンシャルエネルギー曲面上での運動」として捉え,この観点から反応機構を理解する研究手法を紹介します。
反応式A + B → C + Dに対応する最も本質的な状況は,単一衝突エネルギー条件下で個々の反応分子A,Bを衝突させることにより実現されます。生成分子C,Dがどのような振動・回転状態を持ち,どの方向に飛び出してくるかを測定することは,反応途中で系が受けた相互作用の履歴,すなわちポテンシャルエネルギー曲面の最も精密なプローブとなります。本セミナーでは,ほぼすべての安定分子種相手に極めて高い反応性を持ち,それゆえ大気化学での最重要活性種としても多くの反応研究がおこなわれてきた一重項酸素原子の反応ダイナミクス研究を中心に取り上げます。散乱法とレーザー分光法の併用により,これまでは状況証拠から類推されてきたに過ぎなかった反応メカニズムが,反応ダイナミクス研究の結果から,覆された,あるいは実証された例を紹介します。